|
|



|
ストーリー構成・文章・イラスト:杉山 紫/ファイタ−・レンジャー
?ここまではほぼ事前に配布されたレジュメ通りである。 先ずは順を追って合宿の全貌(個人的観測による)を語ることにしよう。
旅に出て受けたカルチャーショックは果てしない。 最初に語っておかねばならないのは「ヨークベニマル」と「ブラックセブン」だろう。 これらのアイテムショップは店内こそ何の変哲も無いが、その看板はカントウ地方に棲む者達に違和感を引き起こさせる。まるで自分のいる世界に似たパラレルワールドへ迷い込んだかのようだ。
そういえば、蛙や蛇などの爬虫類、そしてハラコの愛する猫が宿周辺には多かった。 更に彼女の持つ携帯端末に仕込まれた猫の鳴き声を何度も聞かされ、おスギは故郷に残してきた猫二匹に想いを馳せた。 「あいつら私のこと絶対忘れているに違いない…」案の定、帰宅したら感動の再会、だなんてありえなかった(おっと、「ありえない」は禁句だった)。 逃げる猫。貰ったり拾ったりしてあげたことへの恩は微塵も無いらしい。 もう冬に布団へ入れてやるものか、とおスギは心に固く誓ったのだった。ぷんぷん。 夜になるにつれて虫の数が急増。そこで戦士は剣を収めつつこう言うのだ。 「またつまらないものを斬ってしまった…」 しかし虫の存在を人間の利害で測るのはいかがなものか。うわぁ、哲学だ! さて、ようやくここまできて天体観測の話題に移ろう。 でなければ管理者に改善を要求される恐れが出てくるからだ。しかしレポート作成者の画力ではとても星空を描くことが出来そうもないので、ここでは主に文章に賭けよう(文章力もあるとは言えないんだけど)。 どこかから画像をパチッてこようかとも思ったが、それはやはり間違っていると考えが至った。自分で撮ってこそ、だよね。そのうちちゃんとカメラも使いこなせるようになろうっと。 だけど星空って写真よりも遥かに心の中で鮮明に焼き付いていると思う。なるべくそれが想起されるように努めたい。
第一日目から曇天と根気との勝負だった。 雲の切れ目を探し、移り行くのを待っては望遠鏡を覗く。 しかし何処からともなく湧き上がる気流は決して止めることが出来ない。 ぼくは夜空を見上げるたびに倦怠感をつのらせていった。 しばらく時が経つと夏の大三角形、続く白鳥座は肉眼でも確認できるくらいになった。 レンズ越しに見えたアルビレオの頭は美しく、青と橙の対比は宇宙の理法を克明に表しているかのようだった。(この辺が病的) だけどぼくが真に見たいものは土星だった。 あのリングが、どうしてももう一度だけ見たかった…… また雲が濃くなった。 ぼくが土星の方へファインダーを向けると必ず視界を覆ってしまう。 諦めて赤道儀のクラッチを弛めると、靄は薄れ、レンズを覗けばぼくを嘲笑するように何も見せてはくれない。 思えばあの時もそうだった。 どんなに近くにいても、他人の心を覗くことなんて出来はしない。 あの人へ渡せなかったリングは今も机の引き出しに眠ったままだ。(←さらに病的) ぼくは、いつか土星のリングを見ることができるだろうか―…
*第二日目* 二日目といえば、鬼の望遠鏡講座。 これに尽きる。 朝食後からの7時間半に及ぶ特訓は、学習会を通り越して酷だった。
バーベキューのとき。おスギが湖の方をぼ〜っと眺めていると。ハラコが近寄ってきて。耳元で囁いた。 「おや、何か憑いているみたいだねぇ?」
魂を抜いたことがバレると、ハラコの迫力はますます強くなった。 そして相当根に持つタイプだと自ら宣言。 「うん、それくらい知ってた」おスギは開き直らずにはいられないのだった(呪いが怖いから)。 見えない溝は深まるばかりだ。 二日目の観測会は、それなりにそれなりでした。 一日目よりも雲が少なかったし、プレアデスやアンドロメダ銀河がよく見られたから。 東京なんかでは建物に隠されて見えなくなるフォーマルハウトも燦然としていました。 流星も沢山降りましたね。 双眼鏡で仰ぎ見たアンドロメダ銀河は、銀の粒子を重力で繋ぎとめたような、そんな印象を受けました。230万年も過去の光を今こうして眺めていると思うと、ちょっとノスタルジックな気分に似た、何とも言えない懐かしさがこみ上げてきます。 …少しだけ自分としての感想を述べてみました。 それと、第一日目からずっと星座について教えてくれたこれさん、原さんの分も含めてどうもありがとう。素人同然の二人に一から教えるのは大変だったと思います。 おかげで星空を満喫することができました。そしてボート漕ぎご苦労様です。 さて、二人組もだんだんヒートアップしてきて、地べたに座り込んで双眼鏡を交互に眺めていたりした。 と、そこへ…!ばば〜ん!クイン・テッサ・星人の来襲だ! 「君たちはここで何をしているんだ!?」 (・д・) ホ ゚ カ ー ン 不意を衝かれた二人は……別に何の反応もなかった。 ハラコの網膜の裏の裏の裏あたりで見ていた映像を使って検証してみよう。 (四コマ描くの7年ぶりぐらいだ…)
…とこのように、何が何でもおスギの味方である謎の貴公子・スギヤマン? 。世が危機を救ってくれたのである。めでたし、めでたし。 *例の住民の方、重ね重ね申し訳ありませんでした。 しかしながら、この時点で 「大人としての自覚を持って行動し、且つ充実した日々を過ごす」 という目標の半分は達成されなかったことになる。 大人としての自覚…18歳はまだ成人じゃないという言い訳は通じないようだ。 おっと、ハラコはもう19歳だったっけ。 ともかく、教訓として 人家の真ん前で天体観測はしないこと。 周りに人がいる場合は静かにしていること。 以上。 いよいよ大詰め!いってみよ☆ *第三日目*
「まだ寝ている…!」時計を見れば、二時はとっくに過ぎている。 もう、駄目だ、この人。 でもこの収穫物に関してどんなに興味深く話をしたとしても、ポカリ派の彼女は聞く耳を持たないだろう。 次におスギは賭博場へと足を運び、ギャンブルにのめり込んだ。 ボードゲームの基本・将棋で兄に王だけで負けた記録を持つおスギだったが、カードゲームにかけてはちょっと自信があった。 だけど終盤で大貧民に成り下がり、手元にあったカードは「3・3・3・4・5・6・8」の7枚だった。 これでどうやって勝利しろと!?おスギはふてくされた。 ハラコに事情を告げると、彼女は鼻で笑ってこう言った。「要領悪いね」。グッときた。 そうこうしているうちに喉が渇いたので自販機を覗いてみた…ら。 完売です。 素直な気持ちで凄いと二人は思った。 滅多に見られるものではない。壮観。 ―これは余談だが、おスギは自販機を見るたびに必ず思うことがある。「つめた〜い」と「あたたか〜い」の間に「なまぬる〜い」の枠が何故存在しないのか。あったっていいじゃないか。ファジーな気持ちを味わったっていいじゃないか!(爆) 気が付くと既に日は沈み、辺りは闇が支配していた。 こうなってくるとやらなきゃいけないことはただ一つ!そう、花火だ! ―だが!二人の意識は全く別のところへトリップしていたのであった。それは何かというと……
―つっても実際は全部生き残ってたんだよね。つまんないの。 そういえば、二日目の夜にも何処かで花火を打ち上げていたっけ。あれは一体なんだったのかな?まぁ、いっか ついにきました、三日目の天体観測!ビバ!二人は颯爽と防寒着を手にし、バスに乗り込み、そして眠り果てた。 浄土平に到着した頃、ハラコはすっかり夢の中だった。 おスギはバスにとても弱いので、実は結構きつかった。 バスを降りるとハラコは貼るカイロを取り出し、腹に貼るようおスギに強要した。 貼った途端にお腹が鳴り出したので、何かのマジック・アイテムだったに違いない。 ここで上級冒険者達に従うままに望遠鏡を組み立てて、いざ観測を始めようとしていたところ(バランスウェイトの部品が無くなったのとアイピースを鏡筒の中に落としたアクシデントは省きます)、 天文台勤務の豊崎直紀さん(推定・41歳)が親切にも声をかけてくれた。あのくらいの歳のおじさんは若者にすぐ迎合するみたいだ。そしてやたら構ってもらいたがるらしい。案内された場所には備え付けの大きな望遠鏡があって、設備も整っているようだった。 豊崎氏は得意げに望遠鏡を回転させて星を見せてくれた。
しばらくして、もう一つの望遠鏡でも土星をキャッチしたらしい。 ハラコは今度こそは、と気合を入れて立ち上がった。 「あれ、雲で隠れちゃった」上級冒険者も天を左右させることはできないのであった。 ハラコは激しく舌打ちした。 さらに時間が過ぎ、また土星あたりの雲が薄くなり始めた。今なら見える!ハラコは走った。 走って走って走りまくった。 ―覗く寸前。突如、まばゆい光が視界を照らしたのである。 車のライトだ!ハラコはブチ切れた。
邪悪な気を帯びるハラコ(こわい…)と戸惑うおスギ、そして吹き飛ばされるエキストラ…果たして結末は!?ついにレポートクライマックス!!!ここまで一語一句読み飛ばさないでくれた人だけに送る、大スペクタクル!んでわ、どうぞ。
なんてありがちな展開だろう、とおスギは思った。だけど、胸が苦しいのは何故…? 幽霊君はそのまま涙とともに虚空へと消えていった?… 「これで、良かったんだよね?」 おスギは気を取り戻したハラコに尋ねたが、彼女は何も答えはしなかった。
浄土平から見える土星には、19個の衛星があるという。…ウソだけどね。 *エピローグ* さあ、一つの冒険は終わった。後に二人はとても良心的な宿屋のおやじさんにこんな話を聞いた。 何でも、数年前に天体観測をしにこの地へ訪れた一人の青年が、沼で足を取られて帰らぬ人になってしまったというのだ。 その青年は、とても土星に執着があったらしい。 二人は宿屋の花壇に植えてあったラヴェンダーを(勝手に)引き抜くと、人知れず沼の隅へ手向けてあげたのだった。 FIN. わ〜い!やっと完成(泣)!本当は容量に制限がなかったら、おスギと幽霊君が刺し違えておスギだけハラコにもらったカイロで助かるシーンを入れたかった…うん。 ていうか、これ天文研のレポートぢゃないだろう… そして、いろんな意味で作成したこと後悔… あ、ちなみにおスギとハラコは美化1675%ってとこです。ここまでやりきると逆に清々しい。他人からのツッコミはもちろん不可。 …にしても。「ピーコ」に合わせて「ハラコ」にしたのはかなり無理があったように思う。そして余談だが、笑っていたももかちゃんが原さんを見た途端に無表情になってしまったのには容易に頷くことができる。 …本気で天文研のレポート?…さあ、ね。 2002.8.15.THU 杉山紫・著 |
