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アイコン2003秋合宿アイコン



さて、今年も11月の初旬、法政大学の多摩キャンパスで行われる学園祭のため三日間学校が休講となる。その72時間を利用して天体観測と学園祭で展示する天体写真を撮影しようという意欲的な企画、「秋合宿」が行われた。


一週間前に行われた一泊の観望会では、終夜曇って、太陽が昇ると同時に澄み切った青空があらわれるという天文屋を非常にナメ切った天候だったので、今回の秋合宿にかける意気込みは尋常なものではなかった。


これで曇ったら、夏合宿から通算して3連敗となり、そろそろ戦犯探しが始まりそうな勢いだったのだ。そういう事情もあり、会員の晴天に対する期待は否がおうにも高まるというものである。




★早朝の誤算
さて、11月1日の早朝、私は午前4時に起きて、ムヘモン宅へ向かう電車に乗った。というのも、今回の合宿では経費節減のためにレンタカーを使用せず、ムヘモン家の自家用車を使用して機材の運搬等を行うためだからだ。

が、彼の家に行くためには新橋で横須賀線に乗り換えねばならないのだが、新橋駅にいざ着いてみると横須賀線のホームが見当たらないので、実に混乱した。あまりに混乱したので、同じような方向に向かって進む東海道線に乗ってしまった

早朝の寝ぼけた頭では駅員にホームの場所を尋ねるという機転は効かせられなかったというのは、言うまでもない。さて、予定した時間よりも大分遅刻してムヘモン家に到着し、自動車を強奪して一路大学へと向かった。大学の門が開く8時ジャストに正門前へ到着するのが目標だ。


果たして、正門が開く5分前に大学に到着し、素晴らしいタイムマネージメント能力を一同に見せつけた。この時点で、段取りがいつもの天文研究会よりも格段に良かったので、この合宿は大きな事故もなく、上手く進行するだろうとその場に会した誰もが思ったに違いない。




そう、





小雨混じりの暗く暗い曇り空を除いては。




★晴天・・・?

東京で天気を気にしていてもしょうがないので、雨に打たれつつも一同は機材の搬出をし、一路目的地である北軽井沢を目指した。

さて、この北軽井沢、天文研究会の合宿ではすっかりお馴染みになった観測地である。都心からのアクセス比較的楽であるということと、案外暗い空が得られるということで、2000年の秋合宿以来使用はされ続けている。宿泊は、毎度お馴染みの「艮山荘」。オーナーが天体観測に理解がある方で、深夜の自由な出入りが可能なうえに、歩いて10分程の場所に非常に広い視界が得られるキャベツ畑の中の観測地があり、とても便利な宿だ。



ちなみにキャベツ畑の中と言っても、私有地である畑の中で観測をする訳ではなく、収穫したキャベツの集積場で観測するのである。シーズンを過ぎた真夜中の利用なので、誰にも全く迷惑をかけることなく観測が可能である。ルートは、川越街道からR17を通り、R18経由で軽井沢を抜けて行くいつものルートの予定だったが、生憎世間も3連休。その初日ということで、軽井沢では大規模な渋滞が予想された。

従って、高崎付近で急遽ルートを変更し、R18に入るや否や山間部を通るR406を使用して、軽井沢を迂回しようと目論んだのである。



結果的に、このルートは大正解で、高崎までは渋滞にあったものの、それ以降は渋滞らしい渋滞もなく、非常にスムーズに目的地まで辿り着くことができた




しかも、群馬に入ると雨の東京とは打って変わって紺碧の空が広がっていたのだ




この時点でね会員の期待は一気に高まった

さて到着してしばらくは、機材の搬入など慌ただしかったが、それが済むと非常にのんびりした高原リゾート特有の時間が流れた。晴れ渡った空、清澄な空気、天体観測という過酷な夜の行動を忘れ、大自然を満喫したのであった。

さて、日没と同時に活動開始である。
活動開始と言っても、上弦近い月が出ているので、望遠鏡を出して天体観測という訳にはいなかいし、写真を撮ろうとしても徒労に終わってしまう可能性がある。


そんな中での活動というのはどう言うものかと言うと、2台持ってきた望遠鏡を外気に順応させるため、屋外に放置することと、沈む前に上弦の月を撮影しておくということである。



今回持ち込んだ望遠鏡は2台。
一つは天文研究会所有のG-R200SS通称「富嶽」

もう一つは社長が所有しているロシアINTES社製のMK66。15cmのマクストフカセグレンである。特に社長の望遠鏡は、今回がファーストライトなので、気合い入りまくりだ。

外気順応中に月を見る
図1:外気順応中に月を見る

早速R200SSにTリングとカメラを接続して月を撮る
シャッターのブレを回避するため、フイルムはあえて高感度の1600を用い、1,000分の1のシャッター速度で撮影した。最近では高感度フイルムを使用するのは流行りではないが、こういう方法もアリなのである。



★夜露の襲来
さて、夕食も済んでいよいよ観測地に行こうと意気込んで空を見たら見事に曇っていた。ほんの2時間程前には沈み行く夏の星座が空に輝いていたのに、である。それでもわずかばかりの希望を胸に、機材を自動車に積み込んで観測地に行ってみると、これが何と晴れているではないか。


まあ、晴れていると言っても、所々に雲が点在し、必ずしも快晴というわけではない。

雲量4というところか。一応気象庁の基準では晴れであるが写真の撮影は無理な天候だ。しかし、たった1キロほど離れているだけで、天候がこうも違うとは高原のマジックであろうか。兎にも角にも望遠鏡をセットして、早速観測をはじめる。



が、観測をはじめて背小1時間ほど経つと、にわかに像質が悪くなる。


これは何ごとかと思い、望遠鏡を対物側から覗き込んでみると、何と補正版や主鏡が見事に結露して曇っているではないか。これでは天体が美しく見える訳がない。

仕方がないので自動車の暖房を全開にして、熱風吹き出し口に望遠鏡をかざして結露を払うことにした。果たして、この企みは案外上手くゆき、補正版などの結露はほぼ解消した。

しかし、観測地でこんなにひどい結露に悩まされた経験が全くないため、その対策には辟易した。観測をしててもほんの30分ほどで補正版が曇ってくるのであるからたまらない。無論、望遠鏡にも結露はいい影響を与えない。


曇ったら補正版を布かなんかで拭いてしまえば良いではないか、と思う人もいるだろうが、望遠鏡の補正板や主鏡には光を効率良く反射するためのコーティングがしてあり、布等で拭き取るとこれが剥がれてしまったりして、大変具合が良くない。望遠鏡の結露に対する最良の対策は、温かく乾燥した空気を吹き付けることなのだ。



★曇り
結露に悩まされている我々だったが、その対策に追われていると、今度は空の方がどんどん曇ってきた。おいおい、これじゃあ弱り目にたたり目だよと思いつつも、さすがに雲は人類の力ではどうにもできない。

いずれ晴れるさ、と思いつつ自動車の中に入って仮眠を取る・・・・

が、

しかし、


ふ、と目が覚めるとみごとに全天に雲が!!


そう、車内で仮眠を取っている間に雲が発生して、全天を覆ってしまったのだ。いくら何でも、全天が曇っていたら晴れる見込みがないと思い、午前3時に撤退した。




★晴天の辟易
翌朝、目覚めて空を見てみると、雲一つない見事な晴天!
嗚呼、昨夜の全天曇りはどこへ行ったのか。実に北軽井沢の空は憎たらしい。まるで女心のようにくるくると変わる秋の空だ。なにはともあれ、朝8時に食事を済ませるために起きた以外は、毎度のことながら12時まで爆睡していた。

二日目の日中は、皆昏睡していたが、有志で恒例の草津温泉などに入りに行ったりした。


温泉も大事だが、折角の晴天なので、昨夜の観測で結露した機材を虫干しも兼ねて日光浴。

機材の虫干し
図2:機材の虫干し

おかげで、日が沈む頃には完全に乾燥し、再び観測に使えるように回復したのであった。

ちなみに、温泉組以外の人間は至る所で睡眠をとっていたため、折角の高原の清澄な空気も、美しい紅葉も楽しむことができなかった模様だ。実にアンラッキーと言わざるを得ない。
爆睡
図3:爆睡

★曇天の罠
時刻は5時を過ぎ、いよいよ二日目の夜が訪れようとしていた。二日目の夜、この合宿は二泊三日の予定なので、最後の夜ということになる。

この夜を逃がすと、月の関係から学園祭までもう天体写真を撮影するチャンスがない。そういう意味で、ぜひとも晴天に恵まれ、多くの天体写真を撮影して欲しいのだが・・・


期待とは裏腹に、次第に雲が空を覆い、午後11時をまわる頃には曇り空ではい、残念。


という状況になり、しかも軽井沢方面からもくもくと暗雲がたちこめ、湿った風が辺りを吹き始め、
今にも雨になりそうな様相を呈していた。こりぁいくら何でもダメでしょう。と、いうことで、今回の秋合宿はまともに星を見ることなく失意のうちに終了となる



















と、誰もが思っていたのだが、午前0時半に奇跡が起こった。




持参したやけ酒用の酒を囲んで、皆でやけ酒をしようと思って酒盛りの準備をしていたのだが、ふ、と空の状態が気になって、外に出てみたら、なんと雲一つない夜空が広がっているではないか。これは天恵、とばかりに、酒盛りは無期限延期の決定がなされ、一同は再び観測地へと向かったのである。



観測地は実によく晴れていた。
地面近くに霧が発生しているのが気になったが、それでも美しい星空は我々を魅了してやまない。シーイングの状態はどういう具合かというと、透明度は標高800mということもあって、比較的良好であり、何より風がほとんどない状態なので、気流が実に安定しており、土星等の惑星を望遠鏡で覗くと、像の縁がわずかに陽炎のように揺れているだけだった。


シンチレーションの具合は大変良好であり、総合的なシーイングは7/10というところか。早速望遠鏡を出して、観測をするのだが、他の連中は天体写真を熱心に撮影しており、一向に望遠鏡を覗く気配がない。というわけで、社長と望遠鏡を独占していた。

天体写真は十分撮影していたので、社長が新しく購入したアイピースをサイドバイサイドで見比べての評価を行ってみた。


評価したアイピースは笠井トレーディングのTWV40mm,W17mm,ED9mm,ED5mm


比較した対象は同じく笠井のMC-PL(赤い線が入っているやつ)。 この条件で、各アイピースを覗いて比較してみた。
比較対象となる赤線PL
図4:比較対象となる赤線PL




まずはTWV40mm
TWV40mm
図5:TWV40mm

見かけ視界は62度と必要にして十分で、ペンタXLに近い広さながら、価格は8,800円と半分以下。
この価格で広視界アイピースが手に入るなんて夢のようだ。差込口は2インチ。これで、M42を見てみた。


広視界アイピースにありがちな視野周辺の像の崩れだが、視野の全域にわたってほとんど像の崩れがなかった。同一の視野にM42とM43が入っていたのだが、どちらもしっかりと整った像を見せていた。像のシャープさも良好で、土星の輪と本体の区別が何とかできた。無論、土星の輪は鍋の取っ手のような感じだったが。


像質はPLとほぼ同等かやや上の印象だったが、PLがアメリカンサイズで、見かけ視界が50度程度なのに比べて、 こちらのアイピースの見かけ視界は62度なので、3,800円の価格差を考えると、価格のわりには大変優秀なアイピースだと思う。

個人的には70度を超える超広視界のアイピースは、一度に全周が見渡せないのと、高価なので、見かけ視界60度程度のアイピースが、価格と性能を考えると一番バランスが取れていると思うのだが。そういった意味でも、このTWVは像質・視界の広さと価格のバランスがよく取れているアイピースだ。




次に、WV17mmをPL17.5mmと見比べた。
WV17mm
図6:WV17mm

見た対象は土星。WVで土星を見ると、本体の縞模様が確認できた。
コントラストは結構しっかりしている。

PLでも縞模様が確認できるが、わずかにWVのほうが縞模様が濃いような気がする。
広視界のアイピースということで、気になる視野周辺部の像だが、おおむね視野中心から9割程度のところから 像が顕著に乱れ始める。それより内側での像の崩れは、崩れているのを発見しようとしてアイピースを覗いてようやく発見できる程度だった。


アイレリーフはPLと比べて短く感じた。かなりアイピースに眼を近づけないと視野全体が見渡せない。視野のシャープさはPLと同程度に感じた。



最後に見比べたのは、ED
ED5.2mm
図6:ED5.2mm

カタログでの触れ込みはEDレンズを使用しているとのことだが、その効果はどの程度あったのだろうか。まず、アイピース自体はかなり巨大だ。ペンタのXLと同程度の大きさがあり、接眼部分に赤いコートがしてある。なんだかケンコーのルビーコート双眼鏡を彷彿とさせるコートで本当に良く見えるのかどうか不安になった。

さて、問題の像質なんだが、土星を見て比べてみた。

まずアイピースを覗いて一番感じたのはアイポイントの厳しさだ。
本当にわずかでも眼の位置をずらすと視野がブラックアウトしてしまうので観測には細心の注意が必要だ。PLの方は、アイポイントに比較的寛大で、ブラックアウトはまず発生しなかった。EDの方は、気を抜くとアイポイントがずれてしまって、ブラックアウトするのだ。土星の像はPLと比べて本体の色が薄く、若干青みがかって見えた。これは接眼部のコートのせいだろうか。PLの方が惑星表面の模様は濃く見えた


一方、カッシーニや本体表面を見たところ、シャープさではEDの方がPLよりも勝っていると感じた。気になる周辺像の崩れだが、見かけ視界が50度弱とPLと変わらないためか、視野の全周にわたってフラットな像が得られ、PLと優劣付けがたく感じた。


結局、この晴天は明け方まで続き、雲は全く発生しなかった。神に感謝といきたい。明け方までがんばって写真を撮影した会員の諸君も実にえらい。諦めず貪欲に写真を撮るその精神は実に素晴らしい。

限りある日程と比べ、我が方の精神力は無限大であり、それを余す所なく発揮すれば、曇天でも星雲が鮮やかにフイルムに焼きつけられるのだ!






念写ともいうが。


下らない冗談はさておき、この合宿の反省としては大したものはない。強いてあげれば、高感度フイルムの粒状が思ったよりも気になったことぐらいで、次回以降は普通のISO200にしようと思った。

とりあえず、天候にも何とか恵まれ、つつがなく終わった今回の合宿でした。

文責 ヒャクタケ


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