金星。そういう名前の惑星があるのを大抵の人は知っている。それが地球より太陽の内側を周り、高温高圧の地獄のような惑星であることを知っている人は少ない。この金星は地球の内側を回っているので、ちょうど日食のような現象を起こす。それが今回のネタだ。
一般に「日面通過」と呼ばれているこの現象は、単純に考えるとしょっちゅう観測できても良さそうなものだが、自然界のちょっとした気まぐれで、金星の公転面と地球の公転面が必ずしも一致していないために、太陽・金星・地球が一直線に並ぶということはめったにない。

天文ソフトでシミュレートした日面通過
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その滅多にない現象がおよそ130年ぶりに日本から見えるというので、見てみようと計画が持ち上がり、当日を迎えた。この日、関東地方は梅雨入りして2日目であり、朝方から天候があまり思わしくなかった。今回の現象は14:30頃から日没までの三時間程度の現象なので、この間に晴れてくれれば問題ないのだが、先が思いやられる天候だった。
それでも、昼過ぎには雨が降る様子もなく、雲は出ていたが、一瞬の晴れ間を期待して望遠鏡を出す。使用する望遠鏡は「彗星」と名付けられた天文研で一番古い屈折望遠鏡だ。これに天頂プリズムとサングラスを使って太陽を見る。このサングラスを使用して太陽をみるというのは、大変リスクを伴う方法で、一般にはお勧めできない方法である。
というのも望遠鏡で集められた太陽の光線は大変強く、10分以上サングラスを使うと太陽の熱でサングラスが割れてしまい、目に直接光線が飛び込んでしまう。望遠鏡で集められた太陽の光はとても強く、焦点面に黒い紙を置くと一瞬にして燃え上がってしまうのだが、そんな強い光線が目に直接飛び込むので、最悪の場合失明することもある。
従って、望遠鏡の対物レンズに絞りを付けて直径3cm程度にし、10分以上連続してサングラスを使用しないように注意しなければならない。また、それでも赤外線等の可視光意外の光線が目に到達するので、長時間の観望は避けねばならない。
一番ベストな方法は、太陽投影板という白い板に望遠鏡を通して太陽像を投影する方法で、大勢で見られるし、太陽からの有害な光線の影響もない。しかし、今回は機材調達の予算が得られなかったために、やむを得ずサングラスでの観望となった。もっとも、サングラスの弊害は杞憂に終わったのだが。
本題に戻ろう。望遠鏡をキャンパスの端にあるベンチの脇にセットして時間になるのを待った。空は雲ってはいるものの、雲の流れは速く、ちょっとした晴れ間が覗くことも十分期待できた。待つこと一時間、既に日面通過は始まっているが、雲がかかっているために太陽を見ることはできない。しかも全天が曇っているのならまだ諦めがつくというのに、太陽のすぐ上の部分は青空が広がり、太陽から地平線まで雲がかかっているという、嫌がらせとしか思えない曇り方。
この雲と青空の境目に太陽がある
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これは戦犯が構内にいるせいか?と勘ぐってみたくなるような曇り方だった。
それでも15時を過ぎると、時折晴れ間がのぞくようになり、その場にいた人間全員が何とか太陽面を通過している金星を見ることができた。黒点と比較して金星は非常に大きく、コントラストがはっきりしており、太陽面にパンチで穴を開けたかのように見えた。今まで何度も太陽面を見てきたものの、このように見える太陽は初めてで、非常に興味深いものであった。

みんなで太陽を見る
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写真を撮影。黒いのが金星
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全員が一通り見終わったのを見計らって、ふと、思いつき、持っていたデジカメを接眼部に押し当てて、マクロモードで太陽を撮影してみた。いわゆるコリメート法という奴で、いちばん簡単に写真を撮影する方法だが、結構うまく写っていた。金星もばっちり視認できる。
そうこうしているうちに、本格的に曇ってきてしまい。最後には雨が降り出した。何とも後味の悪い観望会だったが、それでも天体を見れただけ良かったのではないかと思う。
文責:百武