その日僕は埼玉をでて中央線に乗り野辺山を目指し、途中小淵沢につく
が、そこで誤って違う路線に乗ってしまい隣駅の信濃境につく
駅の反対ホームに行こうとしたらおじさんが1時間しないと来ない、小淵沢まで歩くと1 時間以上かかると教えてくれた
「でも、そうはいってもそんなかからんだろうし、まぁそのうちたどり着くだろうな。」
そう思い、歩いていくことにした
が、1時間歩いても駅は見えてこず、辺りは雑木林になり、疲れで背負った荷物がじわじ わと重く感じてきた
ここで僕は気づいた。自分の甘さを。自分のいい加減なところを。
案の定その土地の地理を知らない僕は2、3時間迷い歩いた
歩きながら思った。
「あのとき電車を待っていればよかった…」
「誰かに道を聞けばよ かった…」
「予報で曇りなら止めにすればよかった…」
後悔にさいなまれつつ道脇にガソリンスタンドを見つけ道を聞くことにした
「すみません、小淵沢駅の場所を聞きたいのですが…」
「小淵沢ならここから歩いて30分だけど、なんだ兄ちゃんここまで歩いてきたんか?」
「はい、信濃境から歩いてきました」
「信濃境から!?駅まで歩いていくつもりか?仕事終わるから送ってってやるよ。ちょっと 待ってな」
そのお兄さんの優しさに感謝して車で駅まで送ってもらう。
「あんちゃん、どこから来たの?」
「埼玉からです」
「埼玉から!?向こうは5分おきに電車来るけど、小海線は1時間に1本だからな。次から はちゃんと考えて来いよ。でもまぁそのアホで無謀なとこ俺は好きだよ」
お兄さんの笑顔はなんとも言えない懐かしさを思い出させ、胸にしみた。
宿に着いたが空は曇りで星は見えなかった
星が見えない代わりに持ってきたラジオを聴くことにした
ラジオからはオフコースが流れていた
「君を抱いていいの」
「イエスイエスイエス」
「言葉にできない」
「冬がくる前に」
その切ないハーモニー・深く選び抜かれた歌詞は夜の寒空に、冷えゆく体に、自分の甘さ に突き刺さってくる……
翌日僕は宿を出て温泉に行くことにした。
こんな気持ちで東京に戻れない…
そんな僕の心を温泉は何も言わず暖めてくれた
その昔、人々は航海の時などに北極星を目印として方角を求めていたという。
星は見えなかったけれど色々なことが僕の北極星になった気がした
了
文責:渋川